パレスチナ関連文書ライブラリー

非難など要らない、ただ、友人を返してほしい

拡散歓迎

京都の岡真理です。

他者を非人間化すること(=人間とみなさいこと)が、ジェノサイドを可能にします。

ジェノサイドに抗するとは、死者の数という数字に還元されてしまった者たちの、否定された人間性と尊厳を私たち自身のなかで回復することから始められなければならないのだと思います。たとえば、靴を並べることによって。この靴を履いている身近な愛する者と、ガザの見知らぬ死者を重ねることで、その靴を履いて同じように笑い、走り、生きている彼・彼女らの姿を思い描くことによって……。

ガザ・イスラーム大学で英文学を学ぶ20歳の学生、ムハンマド・マタルの「非難など要らない、ただ、友人を返してほしい」をご紹介します。

きのう、ご紹介したフォト・エッセイ「ガザのたくさんの物語」の著者、サラ・アル=ゲルバーウィーも、イスラーム大学の出身でした。いずれも、大学で学んだ英語を武器に、パレスチナ人個々の生の物語を紡ぎ、世界に向けて発信しています。それは、イスラエルに虫けらのように殺され、死者数という統計数値に還元されていくパレスチナ人1人ひとりの否定された人間性を今一度、私たちの中で回復させるという「レジスタンス」にほかなりません。

人間性を否定する封鎖や占領に抗して武器をもって闘っている者たちもいます。武器を持たずとも、電気があるかぎり、こうして英語で自ら物語を紡ぐことによって、占領や封鎖やジェノサイドを可能にする他者の人間性の否定という暴力に抗して、闘っている者たちがいるということを、ぜひ多くの方に知っていただきたく思います。

現地の情報は、現場に入られたジャーナリストの方々がつぶさに報告してくださるでしょう。ガザのパレスチナ人自身が世界に向けて発信するこれらのエッセイや物語を私が好んでご紹介するのは、それらの書き物自体が、彼・彼女らのレジスタンスにほかならないと思うからです。

非難など要らない、ただ、友人を返してほしい

ムハンマド・マタル
エレクトロニック・インティファーダ/2014年8月16日

待ってくれ!
国連が会議の開催を呼びかけている。

もしもし?
もしもし。

「元気か、ハーリド?」 ぼくが訊ねる。
「ぼくはだいじょうぶだ、きみは?」 ハーリドが答える。
「元気だ。ぼくたちは家から避難はしたよ。あそこの状況がどれだけ危険か、きみも知っているだろう。昨日、アメリカ製のミサイルのシャワーを浴びたよ。爆発続きで眠れなかった」、ぼくは言った。
「神がきみときみの家族を助けてくださいますように」ハーレドが言った。
「ところでハーレド、シュジャイヤ地区で起きたことをきみはどう考える?」ぼくは訊ねた。
あれは、ジェノサイドだ。
「わかってる。神よ、あれらの罪なき人々をお助け下さい。OK、きみはどこにいるんだい、そこは安全かい?被害はない? ここ、国連の学校にしばらく滞在したらどうだい?人間が住むようなところじゃないけどね、でも、ここなら安全だ。」
国連学校の一つが、数分前、イスラエルの戦闘機の標的とされた。
「ハハ、心配要らないよ。ぼくたちは安全だ。どこよりもいちばん安全な場所にいるよ」ハーレドが言った。
天国にでもいるのか?
「でも、地上部隊がハーン・ユーヌスの東の地域に侵攻していると聞いたよ」、ぼくは言った。
「いや、連中はまだだいぶ遠いよ。ぼくたちは安全だ、心配いらない。」
「何か欲しいものはあるかい?遠慮なく言ってくれ」、ぼくは言った。
「ありがとう、ムハンマド、でも、大丈夫だ」、ハーレドは答える。
「ああ、もう行かなくちゃ。また連絡くれよ」、ぼくは言った。
「もちろん、電話をくれてありがとう」、ハーレドは言った。
「なに言ってんだよ! 親友じゃないか!きみがどうしてるかチェックするのはぼくの義務さ。そんなこと言わないでくれよ。とにかく、自分のこと、気をつけるんだぞ」、ぼくは言った。
じゃあな。

2日後、ぼくは、ハーレドがバイクに乗っているところをイスラエルのドローン[無人機]に狙い撃ちされたことを聞いた。
ハーレド・サハムードは20歳、学生だった。ガザのイスラーム大学で機械工学を学んでいた。

バイクに乗ることが、それほどまでに脅威なのか!?

イスラエルはパレスチナ人に対する攻撃を続けるだろう、合衆国が、偏った「国際社会」なるものの監視のもと、この組織的な不正のプログラムを支援し続ける限りは。

ガザのパレスチナ人は苦しみ続けるだろう、イスラエルが、「俺の物は俺の物、お前の物は交渉しだい」という原則を主張し続ける限りは。

非難など要らない。

国連の会議も要らない。

国際援助も要らない。

ぼくは言う、「ぼくのハーレドを返してくれ」


(原文サイトに、海辺に座るハーレドの写真があります)
I don’t want condemnations, I want my friend back

[翻訳:岡 真理]

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