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ハーグ法廷に対しガザの戦争犯罪の取り調べを行わないよう西洋諸国が圧力

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京都の岡真理です。

アリソン・ドゥジャーのカイロの停戦協議をめぐる記事(停戦の期限切れを前に、パレスチナ側は封鎖解除を、イスラエルは「ガザをラーマッラーに」することを望んでいる)の中で、

  1. イスラエルが国連人権理事会や人権団体による戦争犯罪の調査を嫌がっていること
  2. イスラエルをICC(国際刑事裁判所)で訴追する、ということが停戦協議におけるパレスチナ側の交渉カードであること

が述べられていました。

イスラエルのハアレツ紙で、今日、アミラ・ハスが、以下のような記事を書いています。

イスラエルは、アムネスティ・インターナショナルとヒューマンライツ・ウォッチのスタッフが戦闘に関して独自の調査を行うためにガザ地区に入域するのを、さまざまな官僚的言い訳を使って妨げている。(Israel bars Amnesty, Human Rights Watch workers from Gaza

パレスチナによるICCでの訴追についても、イスラエルはこれまでも、合衆国、ヨーロッパ諸国など同盟国を使って、パレスチナ自治政府に圧力をかけ、そうさせまいとしてきましたが、圧力は、ICCそれ自体にもかかっていることを、ガーディアン紙が伝えています。

アメリカの政治家は、大統領から市会議員まで、共和党も民主党も、プロ・イスラエル・ロビーに骨絡みになってしまっていますが、その圧力は、ICCの検事局にまで及んでいるのですね…。これが、私たちが生きている世界の現実なのですね…。国連事務総長も共犯、ICCも共犯…。

しかし、そうだとしても、この不処罰の「伝統」は何としてでも終わらせないといけないと思います。アリソン・ドゥジャーが先の記事で述べるように、カイロの停戦協議において、ICCでイスラエルを訴追することがパレスチナにとって交渉の切り札であるにしても、それは、彼らが、イスラエルの戦争犯罪を裁くことを本当は望んではいない、ということではないはずです。ガザの封鎖解除を実現するためには、その条件交渉として、ICCでの訴追をしない、というカードを切らざるを得ないということなのでしょう。だとすれば、国際社会こそが、この不処罰に終止符を打たなければならないのだと思います。

ハーグ法廷に対しガザの戦争犯罪の取り調べを行わないよう西洋諸国が圧力

ジュリアン・ボーガー
ガーディアン/2014年8月18日

国際刑事裁判所は、合衆国その他の西洋諸国の圧力の結果、ガザにおいて行われたとされる戦争犯罪について取り調べるのを一貫して避けてきたと、法廷の元職員や弁護士たちは主張する。

この間には、ガザにおけるイスラエル国防軍とハマース双方の行動をICCが調査するという可能性が、カイロの停戦協議において、緊張をはらんだ政治的戦場および主要な争点となっている。

ICCの調査がなされれば、広範囲におよぶ影響力があるだろう。その調査は、女性や子どもを含むおよそ2000人の死者を出した今回の戦闘におけるイスラエル軍とハマースその他のイスラーム主義武装組織がおこなったとされる戦争犯罪について調べるだけにとどまらない。それは、イスラエル首脳部が応答責任を負っている、パレスチナの領土におけるイスラエルの入植地も問題として取り上げられうるからだ。

ICCの基本綱領である、1998年のローマ規定は、「占領国が、自国の民間人の一部を占領している領土に直接的、間接的に移すこと」を戦争犯罪であるとしている。

同様に問題となるのは、ICCという、超大国の支援がなく脆弱な地位を占めている国際司法の実験それ自体の未来である。ロシア、中国、インドは、これに署名するのを拒否している。合衆国とイスラエルは2000年に条約に署名したが、のちに撤回している。

国際弁護士の中には、調査を回避しようとすることで、ICCはローマ規定で表明されている、「国際社会全体にとってもっとも深刻な犯罪が処罰されないということがあってはならない」という理想に従っていないと主張する者たちもいる。

オランダのライデン大学の国際法の教授でイスラエルの人権侵害の犯罪歴を長年にわたり批判してきたジョン・デュガードは言う、「検事は容易に法を適用できると思う。法とは選択だ。対立する法的主張もあるが、検事は、法廷の目的は不処罰を阻止することだとするICC規定の前文に目を向けなければならない。」

この数日間、書簡を交わしながら、パレスチナ人側の弁護士たちは、ICCの検事、ファトゥ・ベンスーダには2009年のパレスチナ側の要請に基づいて、調査を行うために必要なあらゆる法的権限を有していると主張する。しかし、ベンスーダはあくまでも、パレスチナ側が新たにそれを発表することに固執している。それには、ハマースなどの政治的諸党派間で掴みどころのない合意に達する必要があるが、そのためにはそれら諸党派が自分たちのことをイスラエル政府ともども吟味しなければならない。合衆国とイスラエルは、パレスチナの指導者、マフムード・アッバースに対し、ICCの調査を求めないよう圧力をかけている。

ICCに対してこの問題にかかわるなという西洋諸国の圧力は、検事局内部にいくつもの深い分裂を生み出している。パレスチナ人は2009年──ガザに対するイスラエルの攻撃、キャストレッド作戦の直後──戦争犯罪について調査するよう要請したが、彼らはその要請が、[パレスチナ]国家の地位が確証されるまで有効であると考えるように導かれたと語る元職員たちもいる。この国家としての地位は、2012年11月、国連総会が投票により、パレスチナにオブザーバー国家としての資格を認めたときに確証されたのだが、その後、[イスラエルの戦争犯罪について]いかなる調査もなされはしなかった。

ベンスーダは当初、パレスチナの有効な要請を再検討してもいいかのような態度であったが、翌年、国連総会の投票は2009年の要請の「法的無効性」を何ら変えるものではないとする声明を発表し議論を呼んだ。

2009年のパレスチナの[要請]発表時の検事であったルイス・モレノ・オカンポは、ベンスーダを支持してガーディアン紙に宛てた電子メールの中で、「もし、パレスチナ人が裁判をしてほしいなら、その旨を新たに宣言しなければならない」と語っている。

しかし、パレスチナの宣言を担当したICC検事局のもと職員は強く反論する。「彼らは、取り繕った司法のジャーゴンの後ろに、政治的な決定を隠そうとしています。権能を無視して関わるまいとしているんです」と元スタッフは言う。

ベンスーダは合衆国とそのヨーロッパの同盟国の大きな圧力にさらされているのだとデュガードは言う。「彼女にとっては困難な選択です。まだその選択をする準備ができていないのです」と彼は主張する。「しかし、これは、ICCの信頼性にも影響します。アフリカ人は、自分たちの大陸に対する調査を彼女は躊躇しないと不満を述べています。」

モレノ・オカンポは2009年のパレスチナ側による調査の要請の資格について決定を下すのに3年を要した。その間、彼は合衆国やイスラエルから関わるなという圧力を受けた。今年、刊行されたICCに関する本によれば、アメリカの当局者は検事に対し、法廷の未来は不安定な状態にあると警告した。

ディヴィド・ボスコ著の「ぞんざいな司法/正義:パワーポリティクスの世界における国際刑事裁判所」によればアメリカ人たちは、パレスチナの調査は「ICCには耐え難い政治的重みとなるだろう」と示唆し、「アメリカ人たちは、この件をもし進めたりすれば、この組織にとって大きな打撃となることをはっきりと分からせた」。

合衆国はICCに資金を提供していないにもかかわらず、「ワシントンの巨大な外交的、経済的、軍事的パワーは法廷にとって多大な恩恵でありうる。定期的に法廷の仕事を支えてきたからである」と、アメリカン大学の国際政治の准教授であるボスコは書いている。

著書の中でボスコは、イスラエルの当局者がハーグでモレノ・オカンポと、調査をさせないためのロビー活動として、イスラエル大使公邸での夕食会など、何回かにわたり秘密裏に会合をおこなったことを報告している。

パレスチナの文書にかかわったICCのもと職員は言う、「モレノ・オカンポがこの件にかかわりたくないと思っているのは当初から明らかでした。彼は、パレスチナ人は実際には調査をしたいわけではないんだと言っていましたが、パレスチナ人が真剣にそれを望んでいたのはあきらかです。彼らは2010年、2名の閣僚と、彼らを支援する弁護士たちとともに代表団を送っているんです。彼らは2日間、滞在し、自分たちの要請について討議しました。しかし、モレノ・オカンポは、この件に関わると、合衆国と懇意にするという自分の努力が台無しになると分かっていたのです。」

モレノ・オカンポは、合衆国の圧力に影響を受けていることを否定している。「私はこの問題と公平に取り組むということについて強くこだわってきた。しかし、同時に、法的な限界も尊重した」と日曜、電子メールの中で述べている。「私はすべての主張を聞いた。オクスフォードのいろいろな教授たちがさまざまな説明をするのも聞いた。多くの場合、それらは相対立する主張だった。そして、結論を下したのだ。プロセスとしては、まず国連に行くべきだと。彼らはどのような実体が国家としてみなされるべきかを決めなければならない。」

彼はつけ加えて言った。「パレスチナは、裁判権を受け入れることをイスラエルと交渉するための脅しの材料に使っていた。誰かが言ったことだが、あなたがもし9人の敵に囲まれ弾丸が1発あったら、あなたはそれを撃ちはしない。目的を達成するための手段としてその弾を使おうとするだろう。」

彼の後任者、ファトゥ・ベンスーダのスポークスウーマンは、検事が調査をするかしないかの選択にバイアスがかかっていると示唆されていることについて否定した。「ICCを導くのはローマ規定、ただそれだけです。裁判権について、ICCはどこで、いつ、介入することができるのかということについての厳格な諸規則は故意に、誤って表現されるべきではありません……地理的、政治的思惑が、検事局が下す決定の一部となることはありません。」

パレスチナ人を代表するフランス人の弁護士、ジル・ドゥヴェールは、パレスチナの領土における法廷の裁判権を決めるのは、ICCの検事ではなく、法廷の予備審査室だと主張する。調査のための新たな要請をするかどうかについて交渉はパレスチナ人の諸党派のあいだで続いているとドゥヴェールは言う。しかし、彼は、法律的には不要なことだと考えている。究極的には、結果は間違いなく政治的なものです、と彼は言う。

「調査を進めるなという巨大な圧力があるのです。この圧力は、ファタハにもハマースにもかかっていますが、検事局にもかかっているのです」、ドゥヴェールは言う、「どちらの場合も、財政的な補助についての脅しという形をとっています、パレスチナに対してのと、国際刑事裁判所に対しての、です。」

ICCの予算の最大の拠出国の一つが英国とフランスだ。両国とも、戦争犯罪調査をするなとパレスチナを説き伏せようとしている。

[翻訳:岡 真理]

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