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2008.09.20

オスロ合意から15年――エドワード・サイードの『収奪のポリティックス』を読もう

Posted by:早尾貴紀

 現在2008年9月は、1993年9月の「歴史的」オスロ和平合意からちょうど15年。オスロ合意は、調印当時は、華々しい式の演出のもとで、和平機運が高まりましたが、次第に、実はパレスチナの側が一切得るものがないまま、ユダヤ人入植地やエルサレムや難民帰還権などを一方的に譲歩させられてしまった内容であることが明らかとなりました。
 エドワード・サイードはそうしたなかで、オスロ以前から和平交渉そのものが間違った方向に向かっていることについて、PLOに対して何度も警告・助言をし、合意調印によって激しく落胆しました。こうした「和平」が偽りのものであり、パレスチナの民族としての権利を放棄するものだということが、交渉の流れからすでに見えていたのです。

 最近刊行された サイードの『収奪のポリティックス――アラブ・パレスチナ論集成1969-1994』(川田潤他訳、NTT出版、2008年) は、1967年の第三次中東戦争直後からオスロ合意の頃まで書き続けられたパレスチナ/イスラエル問題に関する時事批評論考の集大成で、1994年にまえがきとあとがきを附して刊行された原著の日本語訳です。
 つまり、67年の西岸・ガザ地区の全面占領以降、93年オスロまでの時期の主要なトピックについて網羅的に論じられているのに加えて、『オリエンタリズム』から『文化と帝国主義』に至るほとんどの主著を執筆刊行していた時期にも重なり、サイードがいちばん元気で重厚な文章を書いていた頃のものです。
 サイードの時事批評は、その後も継続的に書かれて刊行はされましたが、『収奪のポリティックス』が最重要であることは疑いありません。オスロ以降の混乱、和平の破綻も、すでにこの時点で必然的なものとして見通されています。

 原著の刊行からも長い時間が経ってしまいましたが、その内容は色褪せていません(残念なことに現状が改善していないので)。オスロから15年目のいまこそ本書を読み(直し)ませんか?

【補足】
 翻訳上の問題なども含めた記事を書きました。 「 オスロ合意直後に出たサイードの最重要時評集、15年後についに翻訳刊行!――『収奪のポリティックス』」 (早尾貴紀:本のことなど)をご参照ください。

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