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2009.01.03

(ガザ空爆関連:翻訳)ガザを支配するイスラエル

Posted by:早尾貴紀

 この文章は主にイスラエル内で活動する反シオニストのユダヤ人とパレスチナ人による団体「民主的行動機構」のメンバーが、機関誌『チャレンジ』で発表した文章です。執筆者はイスラエル国籍のユダヤ人です。
 民主的行動機構および『チャレンジ』については、 パレスチナ・オリーブ のサイトをご覧ください。

【追記】
 訳者として補足の文章を「スタッフノート」にアップしました。
「ハマス政権の評価をめぐって――ヤコブ・ベン・エフラートの論考への訳注として」 も併せてお読みください。


『チャレンジ』誌112号(2008年11-12月号)
ガザを支配するイスラエル:占領を永続化する軍事作戦
ヤコブ・ベン=エフラート

 「鋳られた鉛」作戦と名づけられたイスラエルの軍事作戦が2008年12月27日(土)に開始され、その初日から200人以上の命を奪い、イスラエルの世論を大いに満足させている。すでにその前日(26日金曜日)から、「さっさとヤツらをやっつけちまえ!」の合唱が主要各紙のコラムに出ていて、27日にはガザ地区の人々がイスラエル人が長らく望んでいた攻撃を受けることになった。これは、ここ最近のネゲヴ地方の町へのロケット砲撃に対するたんなる対応というわけではなく、なんら自然発生的な作戦というものではない。それに先立つ前の半年ばかりの平穏な期間、ハマースは武装を進めていると警戒されていたが、イスラエル側は周到に攻撃を計画し、ハマースから可能なかぎり最大の対価を搾り取ろうと考えていた。

 表向きガザでの軍事作戦は、イスラエルにより有利な条件でこの地域に平穏を取り戻すためとされていたが、しかし真の目的はさらに先にある。イスラエルは、パレスチナ自治政府と大統領アブー・マーゼン(アッバース)にとって好都合な条件でハマースをエジプトとの交渉のテーブルに引き戻そうとしているのだ。ハマースは、6ヶ月の停戦期間にアブー・マーゼンとの取引を成立させ「建設的に」活用することに失敗し、いまその対価を支払わせられている。イスラエルはハマースに対し、武装抵抗を終わらせ、オスロ和平合意の妥当性を認識させ、カルテット(国連、EU、アメリカ合衆国、ロシア)の提示した条件を受け入れさせたいと望んでいる。言い換えれば、ハマースが、ガザ支配を放棄し、パレスチナ自治政府にマイナーな一参加団体として融合することが前提とされているのだ。

 ハマースが11月にエジプトの提案を拒否し、カイロでの自治政府との会合に参加しなかったときから、カウントダウンは開始されていた。というのも、イスラエルのガザでの軍事作戦は、イスラエル単独の行動ではないからだ。その段階は、ヨルダンとエジプトとの協調によって進められてきた。そしてアブー・マーゼンの賛同も得ていた。ハマースの属するムスリム同胞団は、このエジプト、ヨルダン、パレスチナの枠組みに対する主要な反対勢力をなしている。われわれは二年前にレバノンのヒズブッラーに対抗した同様のアラブ-イスラエル枢軸を知っている。それもまたホワイト・ハウスの支持を得ていた。今回もまた、イスラエルは重要なエージェントの役割を果たしており、共通の敵を弱体化させるのが任務だ。

 ハマースの側は、ありとあらゆる失敗を犯した。その第一は、2007年6月のガザ乗っ取りだ。これによってイスラエルによる封鎖を強化させてしまい、市民に被害を及ぼした。最近の失敗は、イスラエルとの武装闘争を再開したことだ。

 ハマースは、自分たちがガザ地区を支配していることを認知させたがり、それによって自治政府の西岸地区支配に対抗しようとした。それは二重のゲームをしているようなものだった。ハマースは一方で、三年前にパレスチナ自治政府の民主的選挙に参加し、勝利をおさめさえした。だが他方で、そのパレスチナ自治政府およびその選挙は、まさにハマースが認めることを拒否したオスロ合意によってつくりだされたものであった。

 ハマースの指導者ハーレド・マシャルは、パレスチナ自治政府とイスラエルに対する戦線を開くだけでは満足しなかった。彼は、エジプトの提案を拒否したのみならず、エジプトに対しラファの国境(ガザ地区南部でエジプトと接する国境)を開けるよう要求し、エジプト政権の怒りを買った。というのも、国境管理はエジプトの国際的な責務であり、それを侵害する振る舞いだったからである。民衆のレベルにおいては、ハマースの運動は、エジプト大統領ホスニー・ムバーラクに反対するキャンペーンを煽っているムスリム同胞団に加わっている。

 こういったすべての理由から、現在のガザ地区はイスラエルの軍事力に対して孤立しているのだ。パレスチナ人たちが第二次インティファーダ(の弾圧)からまだ立ち直っていないにもかかわらず、マシャルは、ダマスカスの隠れ家から第三次インティファーダを呼びかけた。ハマースが権力を欲していようと、一般のパレスチナ人たちは疲れ、困惑し、そして何より失望してしまっている。パレスチナ人の片方の隣にはアブー・マーゼンがおり、彼はイスラエルが皿に出すありとあらゆるエサを喜んで飲み込んでしまう。もう片方の隣にはハマースがいて、彼らはハマース体制は神の意思だという考えにとらわれている。

 軍事作戦開始後3分以内にイスラエルは数百人を殺傷した。三週間後にはどうなっているかは想像しがたい。作戦の目的は、ハマースに地上世界の現実を教えてやること、そしてさらに可能であれば、二年前にレバノンで失った尊厳を回復することだ。この点で、「鋳られた鉛」作戦は、第二次レバノン戦争の大誤算を調査したウィノグラード委員会の勧告に従って、それを埋め合わせるための作戦だとみなすことができよう。

 だが、イスラエルの現実的な状況はどうだろう。ガザでの流血によって誇示しようとしているほど実際に強力だろうか? ズタズタにされた死体が警察学校の敷地に散乱している映像が、イスラエルに対して最終的にどのような効果をもたらすだろうか? あるいは、パレスチナ人の母親たちの身を切るような叫び声はどうだろう? たいていのイスラエル人たちはなんらかのかたちの正常さを得たいと思い、エフード・オルメルト首相の言うところの「生きるのが楽しい」社会になることを望んでいる。だが、(1948年の建国以来)60年も繰り返される大虐殺のどこに「楽しさ」などあろうか?

 そのうちの過去40年間(1967年の第三次中東戦争による西岸・ガザ地区の占領から)、イスラエルは組織的に他民族(パレスチナ人)を踏みにじり続け、占領の終了を拒絶してきた。パレスチナ人たちはあらゆる権利を失ってきた。彼らの生活は、ユダヤ人入植者たちによるポグロム(大虐殺)と、イスラエル軍によるバリケードや封鎖や隔離壁と、そして過酷な貧困のまっただ中に置かれてきたのだ。オルメルトは、「東エルサレムを含むすべての占領地から撤退する以外にイスラエルには選択肢はないだろう」と発言した(が、それは彼が政界引退をすることが明確になった後になってのことだった)。もしこれがオルメルトの真のポジションであるとすれば、彼はそれまでの任期を空疎なおしゃべりに費やしてきたことになる。しかし、実際の行動において、イスラエルのポジションはその正反対だ。撤退などしないし、自ら違法と認めているアウトポスト(前哨入植地)でさえ撤去しないし、ほとんどの入植者はそのまま住みつづけ、軍隊が境界線(国境)を支配しつづけ、そして ガザ地区は絶望の淵へ沈みつづけている。

 「鋳られた鉛」作戦には、一切の政治的な正当性はない。たとえハマースが交渉のテーブルに実際に戻ったとしても、イスラエルは何も提示などしないだろう。というのも、イスラエルはこれまで同様、和平への対価を支払う気などない、つまり占領を終わらせる気などないからだ。イスラエルが対価を支払ってこなかったからこそ、スデロットやその他のネゲヴの町にロケットが落ちている。そしてイスラエルは、ロケット攻撃を口実に利用して、さらに対価を払わずにすませ続けているのだ。もう一つの口実が、「(パレスチナ側には)パートナーがいない」という呪文だ。イスラエルが「パレスチナ国家の用意はある」と言う場合、それは「すべての占領地において」という意味ではない。したがって、イスラエルがパレスチナ国家について語るのは、目隠しのようなものなのだ。そして、イスラエルが(占領地撤退という)対価を支払う気がないことが、ハマースの強さの源となっている。ハマースの運動には三つの柱がある。貧困、パレスチナ自治政府の弱体、外交上の展望のなさ、この三つだ。

 ガザ地区を現在のような状況に追い込んだのはイスラエルにほかならない。2005年のガザ地区の放棄は一方的なものであり、パレスチナ自治政府には一切の役割を認めなかったため、結果としてハマースによるガザ乗っ取りの余地を残してしまった。したがって、現在ガザ地区で起きていることの責任は、もっぱらイスラエルにのみ存する。もしかすると「鋳られた鉛」作戦は、「さらなる」停戦という結果で終わるかもしれない。あるいはハマース指導部がカイロに再び現れるのが見られるかもしれない。しかし、平穏な状態を回復するだけではなんら解決にはならない。どんな解決策であろうと、占領地が腐敗と貧困と絶望に沈みつづけるかぎり、どんな解決がありうるだろうか? そして次の平穏がさらなる大虐殺に取って代わられるまでは時間の問題ではないだろうか?

 そしてイスラエル社会が占領者としてあとどのぐらい生き延びることができるだろうか? 悪化しつづける紛争に加えてイスラエル国内の社会格差が、ガザからのロケット攻撃より何倍も痛烈な打撃を加えるようになるまではどれぐらいだろうか? 根本的な問題はハマースではない。問題なのはイスラエルの諸政党による国粋主義的な合意だ。それこそが平和への対価の支払いを延期することだけが真の目的である今度の大虐殺実行へと現在の暫定内閣を駆り立てたのだから。


翻訳:早尾貴紀

原文: Israel over Gaza: A Campaign to Perpetuate the Occupation

By Yacov Ben Efrat, Organization for Democratic Action

(付記:いろいろと粗い暫定訳ですみませんが、まず公開します。また、著者が、この文章に続いて補足する文章を出しました。 「ガザ戦争に対するイスラエルの責任」 もお読みください。)

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