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2015.08.16

「安保法案」に反対する中東研究者のアピール

Posted by:情報センタースタッフ

2015年8月10日、中東研究者らが、参議院議員会館にて記者会見を行い、「安保法案」に反対するアピールを発表しました。長沢栄治氏(東京大学)、黒木英充氏(東京外国語大学)、栗田禎子氏(千葉大学)、辻上奈美江氏(東京大学)、宮田律氏(現代イスラーム研究センター)、鶴見太郎氏(埼玉大学)らが発言しました。以下、「アピール」原文を掲載します。

【参考サイト】

「安保法案」に反対する中東研究者のアピール(動画) (IWJ 2015年8月10日)

安保関連法案:研究者ら「中東やアジアの信頼打ち砕く」 (毎日新聞 2015年8月10日)

戦争法案を廃案に:中東研究者アピール 「関係損ねる」 (しんぶん赤旗 2015年8月11日)


「安保法案」に反対する中東研究者のアピール

 わたしたちは、中東の政治・社会・歴史・文化等の研究に携わり、日本と中東の相互理解と友好のために努力してきた立場から、現在国会で審議中の「安全保障関連法案」には重大な問題があると考えます。

一 この法案は、自国が攻撃されていないにもかかわらず戦争に参加する「集団的自衛権」の行使を容認するなど、日本国憲法の掲げる平和主義の原則に明らかに違反しています。憲法9条に示されている戦後日本の平和主義は、日本が近代以降の対外拡張や侵略の歴史を反省し、戦争をしない国に生まれ変わる決意を表明したもので、これにより日本はアジアや世界の信頼をかちえてきました。とりわけ中東は、長く欧米による植民地支配や侵略に苦しんできた地域であるため、日本が経済大国ではあっても海外で一切の武力行使を行わない国になったことはきわめて好意的に受けとめられ、これが日本に対する中東の人々の友情・信頼感の基礎となってきました。平和憲法に反する今回の法案は、日本と中東、世界の諸国との関係を根本から損なってしまいます。

二 この法案は、日本とアメリカがアジア・太平洋だけでなく地球大で「切れ目のない」安保協力態勢を築くことをめざすもので、アメリカの戦争に世界中で協力するための法律と言えますが、この間アメリカ主導で展開されてきた大規模な戦争は実はもっぱら中東地域を対象とするもの(湾岸戦争・アフガニスタン戦争・イラク戦争)です。今回の法案も基本的にイラク戦争等をモデルケースとしつつ、自衛隊によるさらに踏み込んだ米軍支援ができる態勢づくりをめざしています。これは中東がアメリカの世界戦略上、経済的・軍事的に重要な地域であることによりますが、アメリカの戦争が中東地域および国際社会に何をもたらしたかは、現在のイラクやアフガニスタンの状況を見れば明らかです。大国による軍事介入が中東地域にもたらした悲劇・混乱に一切学ぶことなく、アメリカの戦争への協力態勢を一気に拡大しようとする政策は誤っています。

三 この法案では「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」に際しては「集団的自衛権」の行使が認められるとされていますが、その具体例として繰り返し挙げられてきたのは、「ホルムズ海峡が封鎖された場合」です。日本は石油の大半を中東からの輸入に依存しているので、その供給が脅かされた場合に中東に自衛隊を送るのは当然だ、という説明なのですが、資源確保のためなら海外派兵するというのは、植民地主義・帝国主義の論理にほかなりません。日本国民の「くらし」や「幸福」を守るための「自衛」なのだと主張しても、中東の人々には反発されるだけでしょう。資源確保は重要ですが、それはあくまで中東の人々の主権を尊重し、日本と中東の間に対等・友好的な関係を築き上げることによってこそ可能となります。

 今回の法案は日本国民の「命とくらし」を守るためのものと説明されています。しかしながら、戦後日本外交の基本であった平和主義の原則を投げ捨て、大国主導の戦争に追随し、資源への自己中心的野心をむき出しにするような姿勢は、日本に対する中東やアジア、世界の民衆の批判・反発を呼び起こし、「国益」を損ない、むしろ日本の市民の生命と安全をこれまでにない危険にさらすことにつながっていくでしょう。

 以上の理由から、わたしたちは「安全保障関連法案」に反対し、同法案を廃案とすることを求めます。

2015年8月

呼びかけ人:赤堀雅幸(上智大学)、秋葉淳(千葉大学)、板垣雄三(東京大学名誉教授)、臼杵陽(日本女子大学)、岡真理(京都大学)、岡野内正(法政大学)、片倉邦雄(21世紀イスラーム研究会代表幹事)、私市正年(上智大学)、栗田禎子(千葉大学)、黒木英充(東京外国語大学)、小林春夫(東京学芸大学)、坂井定雄(龍谷大学名誉教授)、佐原徹哉(明治大学)、塩尻和子(筑波大学名誉教授)、塩尻宏(中東調査会参与)、設樂國廣(立教大学名誉教授)、鈴木規夫(愛知大学)、鷹木恵子(桜美林大学)、辻上奈美江(東京大学)、鶴見太郎(埼玉大学)、鳥山純子、長沢栄治(東京大学)、新妻仁一(亜細亜大学)、箱山富美子(日本モーリタニア友好協会会長・元国連職員)、八尾師誠(東京外国語大学名誉教授)、原隆一(大東文化大学)、平井文子(アジア・アフリカ研究所会員)、藤田進(東京外国語大学名誉教授)、水島多喜男(徳島大学)、嶺崎寛子(愛知教育大学)、宮治美江子(東京国際大学名誉教授)、宮田律(現代イスラム研究センター理事長)、山口昭彦(聖心女子大学)

賛同者:(略)

呼びかけ人・賛同者を併せ、計105名(8月10日現在)

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