・ 

2009.07.07

ガリラヤで進むレイシズム政策の現在

Posted by :早尾貴紀

 イスラエル国内でアラブ人口がもっとも多いのが北部ガリラヤ地方であり、1947年の国連分割決議においてさえ「アラブ国家」とされるべき地域とも大きく重なっている。
 実際この地域を歩けば、人為的に新しく建設されたユダヤ人の町、カルミエールや、ナザレ・イリット(上ナザレ)などと、そして岡の頂上に点在する監視所的なユダヤ人の集落を除くと、あとはほとんどが「アラブ地域」であることがわかる。すなわち、イスラエル「国内」では普通は「ユダヤ人入植地」という言い方は成り立たないが、しかし事実上これらは、端的に占領地における入植地と同じ存在形態をとっていると言っていい。
 その意味では、イスラエル国内の非ユダヤ人地域というのは、「ユダヤ国家」の内なる外部であり、なんとか「ユダヤ化」を促進しなければならない対象地域として位置づけられている。

 ことあるごとに「ガリラヤのユダヤ化」計画は、手を替え品を替えて提示されてきたが、今回イスラエルの住宅省は、ナザレ・イリット近郊に、ユダヤ教超正統派のコミュニティを大々的に建設すると発表した。
 住宅相のアリエル・アティアスは、超正統派の政党シャスの議員で、今度のネタニヤフ右派内閣のなかでも(リーベルマンと並んで)突出した反アラブ的スタンスで知られている。この計画は、アティアス自身の強いイニシアチブで立案.発表された。

 この計画の狙いは、子だくさんでも知られる超正統派のコミュニティをつくることで、ユダヤ教文化を浸透させガリラヤ地方のアラブ色を弱めると同時に、ユダヤ人人口を急速に増やそうというところにある。実際、超正統派夫婦の平均の出生数は8人にもなる。
 とりあえず来年度に3000軒の住宅を建設するのを手始めに、最終的には2万軒の町を数年内につくることが目標とされている。すなわち、実質人口10万人規模のユダヤ人の都市を、ガリラヤ地域に新たに誕生させるという巨大プロジェクトだ。

 同時に注目すべきは、アティアス大臣が、「アラブ人の拡散を阻止しなければならない」と発言していることだ。
 どう考えても、同じ国民であるアラブ人のイスラエル国籍者が、アラブ人であるということを理由として居住の自由が制限されていいはずがない。そして実際に、ガリラヤ地方に新しくつくられた「ユダヤ人用」の町に、アラブ人が住むというケースが出てきているし、ナザレ地域を見ても、ナザレのダウンタウンのアラブ人増え、隣接するユダヤ人の町ナザレ・イリットに流出してきている。
 今度の住宅省のユダヤ人超正統派の集団移住(入植)を誘致する都市建設計画は、このアラブ人口の増加・拡散に対する対抗であるという面もある。

 それにしてもだ、ここまで政府の国内政策で公然とレイシズムが唱えられても、それ自体が国際的な非難を浴びないということが不思議でならない。「人権と民主主義を世界に広める警察国家」アメリカは、占領のみならず、イスラエル国内での実質的なアパルトヘイト政策を敷いているイスラエルに対して、制裁圧力をかけるべきだし、国連を通して世界に制裁を呼びかけるべきではないのか?
 日本は、こんなイスラエルとの経済関係強化など言っていていいのか? そしてイスラエルと共同で「回廊構想」などという開発プロジェクトをやっている場合なのか?

(上記のガリラヤのユダヤ化計画については、7月2日付けHaaretz紙が報じ、その後7月6日付けのCounterPunchで、ジャーナリストのジョナサン・クックがさらに詳しく解説した。)

次の記事 → 次々と新入植地建設、これを民族浄化と呼ばずしてどうする!?

結局、入植地問題はどうなる?――見落としてはならないこと ← 前の記事

トップページ


Powered by blosxom