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2011.04.27

パレスチナでの気になる動き(その2):ゴールドストーン判事の転向

Posted by :蝦沢 薫

ゴールドストーン判事は、4月1日付のワシントンポスト紙に「ゴールドストーン報告書再考」と題する文章( 参照 )を寄稿し、自らが統括した国連の「ゴールドストーン報告書」(2008年末から約3週間続いたイスラエルによるガザ地区攻撃における国際人道・人権法違反に関する事実確認調査に基づく報告書)の結論に疑問を呈しました。「2008年から2009年のガザ戦争について、今日私たちはより多くのことを知っている。(中略)私が今知っていることをもし当時私が知っていたならば、ゴールドストーン報告書は違うものになっていただろう。」という冒頭で始まる寄稿文では、同報告書の勧告に従ってイスラエル軍が調査を実施したことを評価し、それによりイスラエル政府がガザ市民を意図的に攻撃したことは否定されるとして、イスラエルの行為が戦争犯罪に相当するとした同報告書の結論を再考しています。

これを受けて、イスラエル政府は特別委員会を設置し、国連に同報告書の無効を訴えると大いに勢いづきました( 参照1参照2参照3 )。一方で、イスラエル政府自身も国連による同報告書の破棄を期待するのは現実的ではないと理解しています( 参照 )。さらに、同報告書の共同執筆者である3人はゴールドストーン判事の寄稿文の内容を支持せず、同報告書の有効性を改めて主張しています( 参照 )。現時点では、イスラエルの当初の勢いには陰りが見られます。

3人の共同執筆者は、イスラエル、ハマス双方共、国際的基準に適う独立した調査をいまだに実施していないこと、また特に、イスラエルの戦争犯罪行為を判断するために重要な「ガザ市民を意図的に攻撃したか否か」という焦点について、ガザ攻撃を計画し、その実施を命令のうえ監督した者に対する取り調べが行われておらず、不明のままとして批判しています。つまり、ゴールドストーン判事の寄稿文における、「イスラエル軍が実施した調査により、市民への意図的な攻撃はイスラエル政府の方針ではなかったことが判明した」との見解に反論しています。また、パレスチナ被占領地の人権状況に関する国連特別報告官を2001年から2008年まで務めたジョン・ドゥガード氏(南ア・プレトリア大学法学部教授)も、6日付ニューステイツマン紙にて、「新事実などない」としてゴールドストーン判事の再考に反論しています( 参照 )。彼によれば、ゴールドストーン判事は「フォローアップ委員会」(ゴールドストーン報告書の勧告の実施を監視することが任務)の最終報告書(3月に国連人権理事会に提出された)を再考の根拠のひとつとして挙げていますが、同委員会は、イスラエルによる調査は不十分かつ不透明であるため、ゴールドストーン報告書の勧告が実施されたとは認めておらず、同判事の引用の誤りを指摘しています。

ゴールドストーン判事の転向の背景には、イスラエル政府およびに世界のシオニスト組織による執拗な圧力があったものと想像ができます。その実態については、イラン・パぺ氏が「ゴールドストーンの恥ずべきUターン」と題して、興味深い記述をしています( 参照 )。パぺ氏も指摘するように、ゴールドストーン判事は圧力に屈したのでしょう。イスラエル政府の戦争犯罪の汚名を拭うべく擁護しているだけでなく、同報告書の意図についての言い訳がましい記述の後、彼の焦点はすっかりハマスの糾弾に移っています。ハマスは調査を行っていない、そもそもハマスが同報告書の勧告に従うと期待することが間違っていた、ハマスのロケット攻撃が市民を狙ったものであることは明確である、同報告書がハマスのような非国家組織の戦争犯罪責任を追及したことは画期的で重要である・・・。

ゴールドストーン判事の寄稿文に乗じて、イスラエル政府は、ガザ攻撃にかかる戦争犯罪の疑惑と汚名の払しょくに躍起になっているかのようです。それが意図するところは、次なるガザ攻撃なのではと危惧されます(エレクトリックインティファーダの アリ・アブニマ氏の文章 の特に最後部分も参照のこと)。次なるガザ攻撃が実行された場合、ゴールドストーン判事はどう受け止めるでしょうか。攻撃への足かせを払い、道を拓いたとして、加担したことになるのでしょうか。

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