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Dir Yassin

Posted by:役重

Dir Yassin
www.angelfire.com/il/deiryassin

「Dir Yassin」は、イスラエルで最も政治的にラディカルなハードコア・パンク・バンド。イスラエルのパンク・シーンは、90年代前半の経済成長と「和平ムード」のなかで、一時的な盛り上がりを見た。90年代後半になり、兵役義務などを理由に大半の若者がシーンを去っていくなか、生き残ったミュージシャンらが1997年に結成したのがこのバンド。「CRASS」などに代表されるイギリスのアナルコ・パンク・ムーブメントに大きな影響を受けている。

バンド名は、イスラエル建国宣言の約一ヶ月前、後にイスラエル国防軍に編入されることとなるシオニスト民兵組織「イルグン」が起こした254名の村民虐殺事件にちなむ。この命名からも分かるとおり、彼らはハードコア・パンクという表現手段を通して徹底的にシオニズム国家の矛盾と欺瞞を告発する。サイトにアップされている、インタビュー記事やライナーノーツ等の文章は、イスラエルにおけるパンクの状況や、彼らが「母国」の現状や兵役義務に対してどのように考えているかがよく分かり興味深い。

1999年にドイツのレーベルから『Durchbrechender Geist』を、2001年にはアメリカのレーベルから『S/T』をそれぞれ、7インチEP(向こうではまだ一般的らしい)でリリースしている。収録曲はすべてMP3で冒頭の30秒ほどをダウンロードすることができる。超高速のリズム隊とエッジの効いたギターのリフの上に嗚咽のようなダミ声ツイン・ボーカルが覆い被さる。ヘブライ語なので何を叫んでいるのかは一切聞き取れないが(というか、イスラエル人でもまず聞き取れないだろう)、親切なことにサイト上で歌詞の英訳が読めるようになっている。例えば、「インディペンデンス・デイ」という曲では、「国旗の真ん中にはシオニスト式カギ十字。ユダヤ人による抑圧の象徴だ。牧歌的な白と青の色調も、血のしみや、100年続いてきた搾取と差別を隠すことはできない・・・」と言った調子。

トップページには、2000年にメンバーがヨーロッパに移住した、との記述もあり、現時点でバンド活動がどうなっているのかは不明。右傾化が進むイスラエル国内で彼らの音楽が受け入れられる余地がどれだけあるのか気になるところだ。「Worker’s Hotline」のエフード・エイン=ギルによると、イスラエルの非シオニスト左翼にとって、60〜70年代と現在とで異なる点は、彼らの「周辺層」として、ロックファン・パソコンおたく・ドラッグ愛好者・芸術家・ヤッピー・パンクス等々の潜在的非シオニストの「海」が存在していることだという(※)。そうしたグローバル化にともなう社会的文化的変化から出てきた新しい世代の反/非シオニズム・ムーブメントの先駆者として「Dir Yassin」の存在は無視できないものであろう。

Dir Yassin

※参考:
イスラエルにおける左翼反体制派の復興? (A resurgence of left-wing opposition in Israel?)

2003.12.21

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