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イスラエル国内のマイノリティ

Posted by:早尾貴紀

The Arab Association for Human Right (HRA)
arabhra.org

西岸やガザの状況が悪化すればするほど、「パレスチナ・イスラエル問題」は、並びあった二つの領土のあいだでの「紛争」のようにも見えてきてしまいます。ユダヤ人の入植活動、軍によるパレスチナ人の家屋破壊、土地の収奪などなど。でも、これらの問題は、イスラエル国内においてもずっと続いてきていることだということを忘れるべきではありません。1948年の建国後から現在にいたるまでずっとです。
 イスラエル領となった地域には、現在約120万人のアラブ・パレスチナ人が住んでいます。イスラエル建国後も、迫害・暴力・差別に耐えながらその場に残った人びと、あるいは「国内難民」(故郷の村を奪われ難民となっても、避難先がなおイスラエル内である場合)となりながらも国外へ政治亡命をしなかった人びと、そしてその子孫たちです。イスラエル国籍を持ち、イスラエルの人口比で約20パーセントになります。
 こうしたアラブ・パレスチナ人らは、国籍を持つ「国民」でありながら、ユダヤ人至上主義国家においては「非ユダヤ系市民」というネガティヴな存在として、はっきり言えば「いてほしくはない人びと」として扱われています。たとえばアラブ人のもっとも多い北部ガリラヤ地方では、長年「ユダヤ化政策」によって、土地の取得や開発について行政許認可による露骨な差別が行なわれ、アラブ人地域の経済活動は農業分野でも工業分野でも阻害されてきました。南部ネゲヴ地方では、ベドウィンのアラブ人の多くの村が「非公認」としていまだに恒常的な破壊の対象となっています。
 このベドウィンの人びとは、アラブ・ムスリムでありながら、イスラエル建国後すぐからイスラエル軍に徴用され、主に国境警備兵をさせられてきました。一方では地理的知識とアラビア語力を期待して、他方では大きなムスリム・コミュニティへの帰属意識の弱さにつけ込み、パレスチナ・ムスリムの一体性を分断するための政策だと言われています。ベドウィンと同様に、マイノリティ中のマイノリティとしてイスラエルに利用されているのがドルーズです。特異なムスリムの一派として独立性の強いドルーズ・コミュニティは、そのためにかえってアラブの一体性を分断しようとするイスラエル政府に利用され、1956年から徴兵を適用されました。ドルーズ兵は恣意的にパレスチナ占領地の最前線に配備され、その「手柄」と「勇猛さ」が誇大に宣伝されることで、占領地パレスチナ人らの敵意が「裏切り者」ドルーズに向けられるようにされてしまったのです。
 などなどの要因もあって、この「イスラエル・アラブ」と称される人びとは、「パレスチナ人」としてのアイデンティティを持つことが困難な状況に置かれています。この問題については、こんなスペースで書けることではありませんので、このへんで。

 さて、ここで挙げたサイトは、イスラエル国内のアラブ・パレスチナ人の人権問題に関わっているNGOのサイトです。これを紹介しようと思ったのは、ベドウィンの問題にもきちんと取り組んでいるところだからです。絶対数で言えばベドウィンはたしかにひじょうに小さいですが、そこにかえってシオニズム国家の本質が浮き彫りにされていると思います。「パレスチナ問題」が実は「イスラエル問題」であり、「シオニズム問題」であるということを、改めて考えさせてくれるのではないでしょうか。

The Arab Association for Human Right (HRA)

http://www.arabhra.org (別のウインドウで開きます)

2004.01.12

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